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本研究は,話者の会話行動が他者からの関係開始スキル評価に及ぼす影響について探索的な検討を行った.具体的には,発話内容とハンド・ジェスチャーに着目するマルチ・チャネル・アプローチを用いて関係開始スキル評価に与える影響を検討した.はじめに,会話実験により会話相手からの関係開始スキル評価を測定し,次に,会話実験時の映像を視聴した第三者からの関係開始スキル評価を測定した.そして,関係開始スキル評価と発話内容およびハンド・ジェスチャーとの関係を検討した.まず,発話内容およびハンド・ジェスチャーがそれぞれ関係開姶スキル評価に与える影響について検討したところ,前者は第三者評価において,正反応,応答,質問が有意な正の影響を与え,後者は会話相手の評価において,図解と対象物調整が,第三者評価において,図解が関係開始スキル評価に有意な正の影響を与えることが示された.さらに,発話内容に関連するハンド・ジェスチャーである図解(Ekman & Friesen, 1969)に着目したマルチ・チャネル・アプローチによる検討の結果,会話相手の関係開始スキル評価に関しては,図解と質問の交互作用項が有意な負の影響を与えることが明らかになった.すなわち,会話において図解と質問を多く併用する人は,会話相手から関係開始スキルが低いと評価されることが示唆された.この結果から,関係開始スキル評価については,言語的・非言語的コミュニケーションに着目したマルチ・チャネル・アプローチを用いることの重要性が示唆された. |