照葉樹林帯に生息する野生ニホンザル(Macaca fuscata)非餌付け群の研究はヤクシマザル(M. f. yakui)を中心に行われてきたが、ホンドザル(M. f. fuscata)については情報が少ない。そこで2013年より鹿児島県大隅半島稲尾岳周辺域の照葉樹林帯(肝付町大浦集落~南大隅町沢渡集落、2集落間の直線距離は約7 km)においてホンドザルの非餌付け群の継続調査を行い、2013年には平均45.3頭以上の群れを3つ観察し、2014年には平均109.5頭の群れを2つ観察した。本研究はこの継続調査の3年目として行った。調査は2015年9月14-16日に行い、道路上に現れるサルをカウントすることで、群れサイズ、性・年齢構成等のデータを収集した。その結果、調査期間中に214頭の集団が2時間半に渡って道路を同方向に横断するのを確認した。この集団が1群だったと仮定すると、この地域ではこのひとつの群れが、頻繁にサブグルーピングし、離合集散していたと考察できる。一方でこの集団が2群だったと仮定すると、おそらく100頭を超える2群が、目立った敵対的交渉もなく同方向に移動したと考察できる。しかし本研究では群れの識別が不明確であり、今後、群れ追跡などを行うことで、より詳細な検討を加える必要があると考える。