本研究の目的は(1)熟達者の授業を参観し模擬授業することにより,大学生のPCKがどのように変容するかを明らかにする。(2)熟達者の授業を参観することにより,大学生のPCKがどのように変容するかを明らかにする。である。研究の方法は「目的(1)熟達者の授業を参観し模擬授業することにより,大学生のPCKがどのような変容するかを明らかにする。」ために,熟達者の授業を参観後,模擬授業を行う群をA群4名,熟達者の授業を参観のみ行い,模擬授業は行わない群をB群52名とした。なお,A群4名は自ら志願して授業参観と模擬授業を行った。「目的(2)熟達者の授業を参観することにより,大学生のPCKがどのような変容するかを明らかにする。」ために,熟達者の授業参観も模擬授業も行わない群をC群14名とし,B群(熟達者の授業を参観のみ行い,模擬授業は行わない群)との比較を行った。研究の結果,教員養成系の大学生に関して,熟達者の授業を参観し,その後,自分で模擬授業を実施すると,学習者中心のPCKを有するようになると推察されるが,反対に,模擬授業を実施せず,熟達者の授業を参観しただけでは,教師中心のPCKはそのまま維持され,学習者中心のPCKへと変容しないと推察された。また,たとえ熟達者の授業を参観したとしても,その後,模擬授業を実施しなければ,大学生が行う模擬授業を参観することを通して,より実践的な知識は得られるが,教師中心のPCKはそのまま維持され,学習者中心のPCKへと変容しないと推察された。