【問題と目的】近年,教育現場においては,子どもの社会情動的能力の育成が注目されている。本研究では,子どもの社会情動的能力を育成する教育者側の情動面の個人差として,情動への評価及び共感性に着目し,それと子どもへの情動的支援の認識との関連を検討した。
【方法】教員養成学部の大学生を対象に質問紙調査を行い(有効回答133名:男性42名・女性91名),情動への評価,多次元共感性,情動的支援の認識の3つを測定した。
【結果】クラスタ分析により情動への評価と共感性をそれぞれ群分けして独立変数とし,情動的支援の認識を従属変数とする分散分析を行った。その結果,情動への評価ポジティブ群はネガティブ群と比べて子どもの主体的解決の支援を重視すること,また,共感性全般高群が自己指向群よりも子どもの主体的解決の支援を重視することが明らかになった。
【考察】以上の結果から,情動をネガティブなものではなく必要で意味あるものなどポジティブに評価することや,他者の情動に対して自己防衛的な反応のみを感じるのではなく,多様で豊かな共感反応を抱くことが,子どもの主体的解決をより重視した情動支援を行うことにつながることが示唆された。よって,教員養成課程の段階から,情動の意味や機能を知りポジティブに評価することを学ぶことや,共感性を多次元でとらえ,多様な共感反応に意味があることを学ぶ意義について論じた。