日本では過去に外来種が短期間に個体数を増やしたり、広い分布域を獲得したりする結果、種構成が変化した例がある。しかし、その要因は明らかになっていない。本研究課題は、広く日本に分布する在来種のナメクジMeghimatium bilineatumと戦後移入し日本全国に分布した外来種のチャコウラナメクジAmbigolimax valentianusの2種について生態を比較することにより、日本におけるナメクジ類の種構成の変化を引き起こす要因について明らかにすることを目的としている。
2019年度は主に在来種のナメクジを対象とし、本種の生活史を明らかにするために、定期的な野外個体の採集および、その生息環境の調査を計画していた。しかし、採集場所、および環境調査として想定していた箇所のかく乱により、多数の個体を継続的に確保することが困難となったため、一部の個体を実験室で飼育し、性成熟および産卵する条件の検討も行った。その結果、ナメクジはチャコウラナメクジ同様、日が短くなる秋に性成熟をしている可能性が示された。しかし、結論を得るための十分な個体数を確保できておらず、また、外見はナメクジに似ているが、成長すると別種のように見える個体が採集された。次年度はナメクジの生活史とその生息環境を明らかにするために、採集地点を増やし十分なデータを得るとともに、外部形態による同定が難しい場合はDNAによる同定を行う必要がある。