本研究の目的はADPリボシルシクラーゼ活性をもつ細胞膜外酵素ファミリーを形成するBST-1およびCD38による新規TLRシグナル制御機構を解明し、BST-1/CD38の感染・炎症疾患における役割を明らかにすることである。
これまでBST-1を欠損したマクロファージは大腸菌成分であるLPS刺激時のIL-6産生が低下することを示唆する結果が得られていた。最終年度は、試験管内で見られた上記の現象が生体の反応に反映されるかどうかを明らかにするために、LPSをマウスの腹腔内に投与し敗血症ショックを誘導する実験を行った。使用したマウスはSPF環境でBst1遺伝子ヘテロ接合体マウス同士の交配によって作製した野生型とBst1遺伝子欠損マウスである。各群10匹以上のマウスを使用して複数回の実験を行ったが、LPS投与後のマウスの生存率に有意な差は見られなかった。
昨年度、小腸パイエル板内の胚中心B細胞の一部にBST-1が発現していることを新たに発見した。最終年度は同じ胚中心内のB細胞においてBST-1の発現の有無によって細胞の状態が異なるどうかをフローサイトメトリー解析したところ、活性化の指標となる細胞の大きさや表面のMHCクラスII、CD86の発現がBST-1陽性細胞で増加していた。既に活性化している胚中心B細胞においてBST-1が更なる活性化状態を示す新たな指標となる可能性が示唆された。
本研究でBST-1が脾臓辺縁帯B細胞や小腸パイエル板内の胚中心B細胞など自然免疫に近いと考えられるB細胞に発現していることを明らかにしたが、それらの細胞上のBST-1が生体内で自然免疫、獲得免疫をどのように制御しているかを明らかにすることは未だできていない。マウスの飼育環境や腸内細菌叢の違いによっても反応が異なることも考えられるので、今後はそれらの点にも注意して解析を進める必要があると考えられる。