モンゴロケリス(Mongolochelys efremovi Khozatsky, 1997)はゴビ砂漠西部に分布するネメグト層より産出する代表的なカメ類の化石としてよく知られている.本種はかつて,カメ目のうち潜頸亜目に帰属すると考えられていたが,近年の研究ではカメ下綱のステム群のなかに位置付けられ,最近の研究ではシチュアンケリス属ないしローラシケリシス属と姉妹群をなすと考えられている.本種の化石は,頭蓋や下顎も含め保存の良い化石が豊富に発見されているにも関わらず,記載論文では詳細な比較や検討がなされていない.このため,その系統学的位置づけについてもさまざまな仮説が示されており,再記載が強く望まれている.そこで本研究では,ネメグト層が分布する化石産地より発見された本種に参照される5点の頭蓋化石の標本とネメグト産の模式標本に含まれる頭蓋1点に関する文献情報を用いて,形態形質に関する再検討を行った.その結果,これまで未確認の状態にあった底蝶形骨吻部の形状が,太く棒状になっていることが確認できた.また,ネメグト産の模式標本と5点の頭蓋標本の間には,鱗板や眼窩の形状に大きな差異があることが明らかとなった.底蝶形骨吻部に見られる棒状の突起は,ウミガメ上科とオオアタマガメ科においても確認されていることから,収斂によるものと考えられる.ネメグト産とそれ以外の2ヶ所の産地の間には,化石の種構成において異なることが示唆されている.このことから,今回検討した標本には形態的に識別できる2つの集団が含まれていると考えられる.今後,モンゴロケリス属の系統学的位置づけや多様性を明らかにするため,本研究で明らかとなった形態データを加えた再解析と詳細な比較が強く望まれる.