理論は実践で使ってこそ真価を発揮するし,実践で使うことで進化するものである。しかしながら,書籍『経営学の危機』で示されたように,現在の経営学と実社会との関係は必ずしも密接であるとは言えない状況にある。
こうした問題意識のもと,本研究では研究方法論のオートエスノグラフィーに注目し,他の学問分野を含む文献レビューと実践者へのインタビューを行い,考察した。その結果,マーケティング分野の研究と実践において,研究者が実務に関わり,実務家が研究に関わることで「探求と創発」を推し進めるにはどうすれば良いかの仮説を示している。
具体的には実務家と研究者が共に研究手法であるオートエスノグラフィーを使うことで,実践の姿勢や技術,知識を身につけ,共により良い未来を描いていくプロセスである。「自分が何者であるか」を掘り下げ,手段が目的に先行するこの考え方は,優れた起業家の思考プロセスの論理であるエフェクチュエーションにも通じるものだ。