本論文の目的は,ソーシャル・メディアを利用している広島東洋カープファンの特性を明らかにすることであった.そして,明らかにした特性を以下の3点に示し,本論文の結論とした.
1点目は,歴史的なコンテクスト・ブランディングの柱である「資金力不足」から多くのサブブランドが派生した結果,カープの成績への期待に加えて多くの価値観がカープファンの中に形成されたことであった.これは,他球団のファンと比較して価値観が多いことが推測され,歴史的に見るとMullin et al.(2007)が提唱した「エスカレーターモデル」のようにカープへのロイヤルティが徐々に上がってきたことが考えられた.
2点目は,ソーシャル・メディアの影響を受けて,従来のファン層にはほとんど存在していなかった,カープ女子に代表されるカープファンが近年急増したことであった.これらのファンは,短期間でカープに対するロイヤルティを形成した.これは,原田ら(2008)が提唱した「エレベーターモデル」のようにカープへのロイヤルティが急激に上がってきたことが考えられた.このように新たなファン層が急増した背景には,事件などにカープやカープ在籍選手が関わっておらず,ソーシャル・メディアのデメリットの影響を受けなかったことが挙げられた.
3点目は,タイプの異なったファンや,様々な価値観を持ったファンが,カープという共通のものを一緒に応援していることであった.このことから,カープファンにおいては,上記の「エスカレーターモデル」と「エレベーターモデル」の両方が存在していることが考えられた.