本稿では高槻市を事例として,自治体の住民の地域満足度(居住する地域の暮らしやすさ)の基本的な趨勢と,その規定要因の経時変化の実態を明らかにする.「高槻市と関西大学による高槻市民郵送調査」データのうち,2012~2022年のデータに含まれる継続項目を使用する.満足度や主観評価に関する研究の展望についても議論する.
一つめの分析として,満足度項目の基本的な趨勢の確認を行った.比較対象である生活満足度の質問項目(⚕段階)には変更がなかったのに対し,地域満足度の質問項目(⚕段階)は,2017年以降の選択肢の文言に変更があり,度数分布にもその影響と見られる変化が生じていた.しかし,地域満足度の⚕段階項目を⚔段階に再編して比較した場合には,生活満足度と同様,安定的な平均値の推移を確認することができた.また,高槻市内の地域間で満足度に差があり,その差も安定的であった.
二つめの分析として,地域満足度(⚔段階)の規定要因の分析を行った.順序ロジットの分析結果では,個別の調査年によって有意な独立変数の組み合わせが異なっていた.しかし,11か年のデータを統合した分析の結果も合わせて比較すると,世帯収入,住居,居住地域などの独立変数において概ね一貫した傾向が確認された.今回の結果も踏まえ,今後のより多角的な満足度研究の進展が期待される.