がん細胞の多剤耐性化は細胞内苦味受容体による抗がん剤感受が起点となる

文部科学省 日本学術振興会

科学研究補助金（基盤研究(C)(一般)）

中村元直

基盤研究(C)(一般)

本研究は、がん化学療法時の多剤耐性化の成因解明と、この耐性の回避薬創製コンセプトを社会に発信する。申請者は、がん細胞の内部に苦味受容体が局在することを発見した。抗がん剤の頻回投与でがん細胞は多剤耐性化するが、苦味受容体は細胞内に浸潤した抗がん剤をリガンドとして感受/活性化し、これを細胞外へ排出する機構を作動させることで抗がん剤蓄積を回避し、この機構の恒常化により多剤耐性能を獲得するという成因仮説をたてた。即ち、抗がん剤/苦味受容体の結合を遮断する拮抗薬で抗がん剤耐性化を抑制できる。本研究は、がん細胞内での苦味受容体の発現/局在、そして抗がん剤による苦味受容体活性化から有害物排出機構の作動までの情報伝達経路を明らかにし、苦味受容体拮抗剤の多剤耐性化回避薬としての有効性を社会に提示する。本研究の成果で免疫療法、放射線治療、外科治療などに加え、がんの化学療法も新たなステージに進むことを期待する。