本研究は苦味受容体の拮抗剤を創製し、これを抗がん剤の耐性回避薬として臨床応用することを目的とする。苦味受容体(TAS2Rs)はGPCRファミリーに属するが、申請者はこの受容体が種々のがん細胞に発現し、しかも形質膜ではなく細胞内に局在することを発見した。では、がん細胞に発現する苦味受容体の生理学的意義は何か?その働きは、細胞内に浸潤した抗がん剤をリガンドとして認識後、排出機構(排出蛋白質ABC-B1の発現誘導など)を作動させることで抗がん剤を細胞外に排出し、薬剤蓄積による細胞障害を回避すると予測した(右図)。これが証明できれば抗がん剤を感受する苦味受容体の拮抗剤で抗がん剤耐性が抑制できる。この仮説を立証し、細胞内苦味受容体を標的とした新しいコンセプトの抗がん剤耐性回避薬の開発を提案することが本研究の目的である。本研究の成果から免疫療法、外科治療などに加え、がん化学療法も新たなステージに進むことを期待する。