1.はじめに
児島湖は岡山県南部に位置し、児島湾の湾奧にある人工湖である。面積は 10.88 km²、総貯水量は 2,607 万 m³である。児島湖の流域面積は、岡山県の約 13 分の 1を占めている(岡山県, 2022)。児島湖は、高度経済成長による人口増加や活発な産業活動が原因で1975年頃から水質悪化が問題となった。1985年に湖沼水質保全特別措置法に基づく指定湖沼に指定され、様々な水質改善のための対策によって、1980年代前半に11~12 mg/LだったCOD(75%値)は2020年には8.1 mg/Lに減少した。しかし環境基準である5 mg/Lは未だ達成されていない。この原因として、児島湖に難分解性有機物が蓄積している可能性が指摘されている(岡山県2020 年)。本研究では、児島湖及び児島湖に難分解性有機物を供給する負荷源の試料水中の難分解性有機物濃度や蛍光スペクトルの特徴を100日生分解実験により明らかにすることを目的とした。
2.方法
採水は、2023年 1 月 13 日、2023年 3 月 17 日、2023年 5 月 22 日、2023年 8 月 30 日、2023年 10 月 16 日に、倉敷川・笹ヶ瀬川・児島湖表層において、 2023 年 6 月 24 日に岡山県岡山市千両街道(児島湖付近の用水路:田面流出水)において、2024年9月4日、2024年10月17日に児島湖湖心と児島湖流域下水道浄化センターからの流出口付近でおこなった。採取した水試料は20 ℃暗条件でインキュベーター内で生分解実験に供した。生分解実験では一定期間ごとに水試料を取り出し、COD・DOC・蛍光スペクトルを測定した。100日生分解実験後に残存している有機物を難分解性有機物とした。 COD 測定は JIS K 0102 法に従い、測定は 3 回行い平均値を算出した。DOCは全有機炭素分析装置 TOC-VCSH (SHIMADZU 製) を用いて高温触媒燃焼方式によって測定し、測定は3回以上行った。三次元励起蛍光スペクトル(EEM)測定は、Aqualog (HORIBA 製)によって測定した。励起波長は 250-550 nm (5 nm 間隔)、蛍光波長は 212-619 nm (3 nm 間隔)の範囲で測定した。蛍光スペクトルデータを用いてPARAFAC (Parallel Factor Analysis) 解析をおこなった。
3.結果
児島湖水・田面流出水・児島湖流域下水道浄化センター放流口の水試料の生分解実験の結果を図1に示す。児島湖水試料では、DOCは緩やかに減少し、CODは、採取後25日目まで急激に減少したのち、ほぼ一定値を保ち、100日後には、採水日の値と比較して、DOCは80 %,CODは60 %が残存した(難分解性DOCおよびCOD)。負荷源のうち田面流出水は難分解性DOC濃度が大きく(5.04 mgC/L),児島湖流域下水道浄化センターは小さかった(2.93 mgC/L)が、後者は採水日のDOCのうち85 %を難分解性有機物が占めていることがわかった。当日はEEM-PARAFAC解析の結果についても報告する。