光学顕微鏡は大変有用な教具であり,日本の理科教育では小学校から高等学校に至るまで,生物観察の学習に頻繁に使用されているが,殆どの場合,透過光による観察である.透過光を通して観察する場合,試料から得られる画像は概ね平面的であり,双眼実体顕微鏡や電子顕微鏡のように立体的な画像を得ることはできない.ただし双眼実体顕微鏡は低倍率に限られ,光学顕微鏡ほどの高倍率画像は残念ながら得られない.
本来,生物細胞は立体的に組み合わさっており,従来のように平面的な画像のみで立体的なイメージまで組み立てられないのは,生物細胞の誤概念を助長することにもなりかねない.大学生2年生を対象に行ったアンケート調査では,殆どの学生が植物の気孔を立体的なイメージとして記述することができなかった.そこで今回の研究の目的として側射照明を工夫することで立体的な画像が得られるようにし,生物細胞のイメージを立体的に再現できるようにした.生物観察で一般的である葉の気孔の観察を例に取ると,LEDによる側射照明の照明光度や入射角等の工夫を施すことで,孔辺細胞が凸に盛り上がった様子や気孔が凹に陥没した形状を観察することができた.今回の発表では透過光で得られた画像と撮影された画像を比較しながら,用いたマニュアルについて報告し,この観察方法について議論する.