ツユクサ(Commelina communis )の葉は表皮細胞の剥離が容易であることから,透過光での顕微鏡観察にしばしば用いられる.しかしながら表皮細胞の剥離が容易な植物は限定的で,剥離が容易でない植物での高倍率画像は得られにくい.さらに教科書等に記載された表皮細胞の顕微鏡画像は概ね2Dで,立体的な細胞モデルに言及できにくいのが現状である.大学2年生対象のアンケート調査で「気孔」を立体的な3Dとして描かせたところ,殆どの学生が2D止まりで3Dで描けなかった.この結果は顕微鏡観察による対象物のイメージは概ね2Dの世界に留まっていることを示唆している.そもそも気孔の開閉は孔辺細胞の内部の浸透圧に起因していることがわかっており,立体的な画像の方が理解にはより適切と思われる. そこで今回の研究の目的として立体的な画像が直接得られるように,側射照明を工夫した. |
側射照明補助装置の作成方法としては,ボディには塩化ビニル製パイプを用い,側面に直径5 mmの穴を対物レンズの倍率に応じた勾配をつけながら開け,白色高輝度LEDに 30 Ωの抵抗を取り付けたものを挿入した.電源には直流電源装置を用い,4.5 Vの電源電圧をかけて観察した.さらにLEDを2個または3個を直列にした場合とも比較し検討した.試料としては日本の身近な草本植物および木本植物を使用し,観察は全ての種で葉の裏側を用いた.その結果,それぞれの植物が持つ様々な形状の気孔を3Dで概ね観察でき,気孔の密度の違いや孔辺細胞のサイズの違いなど様々な比較が可能であった.このことは表皮の剥離容易性を問題にすることなく多種の植物を選択観察が可能であり,気孔が植物の一般的な器官であることや形状を変化させるに至った環境への適応についても言及できると期待できる.今回は用いなかったが,画像処理アプリケーションの使用により,さらに高画質な画像が得られることも可能と思われる.