「よい教育についての規範的な問いを,プロセスの効率性や効果性についての技術的で管理的な問いに置き換えている」とビースタ(Gert.J.J.Biesta)が指摘するように,現在,多くの教師にとっての「責務」とは,学習指導要領に示された目標を達成するために,限られた時間内に教科書の内容を,効率的かつ効果的に教えることになりつつある.教師自身が授業の目的を主体的に吟味するか否かによって,内容構成も授業過程も,子どもへの教育的効果も異なったものとなる.子どもの実態や彼らが置かれた環境,そして現在の社会状況等を踏まえ「なぜこの授業をしなければならないのか」常に自問自答しながら授業しなければ,学習指導要領が目指す子どもの「持続可能な社会の形成者としての資質・能力」は保障できないのではないか.
そこで,本研究は,教育のねらいの批判的検討を踏まえ,既存の授業理論や教育内容や教育方法を活用し,マネジメントできる教師の教育の在り方を提案する. 当日の発表では教科観の育成を目的とした「初等社会科内容論」および,主体的なカリキュラム調整力の育成を目指した「初等社会科教育法」の分析から,教職を目指す学生がどのような学びを経ることで,どのようなカリキュラム調整力を身に付けたかを明らかにしていく.