現在行われている古代史の学習は,社会的レリバンスを保障していないのではないか,ということが本研究の主張である。著者が2023年に小学校6年生を対象に行った「重要だと考える歴史的事象・人物」についてのアンケートでは,「卑弥呼」「古墳の出現」「大和朝廷の成立」「縄文土器」といったいわゆる古代史にあたる事象・人物はほとんど選択されず,「第2次世界大戦」「日本国憲法」「東京オリンピック」等近現代史に関わるものが多く選ばれる結果となった。古代史は「平等原理だった人間社会の中から不平等が生じ,格差が現れ,支配や服属,抑圧や摂取のしくみができてしまったという現在の問題を過去に投影して,その起源や本質を解明する試みの出発点」(松木2021, p.230)となるべき教材であり,子どもの歴史認識を及び社会認識を新たにする可能性をもつものである。その意義が多く子どもに理解されていないのではないか,ということが本研究の問題意識である。
そこで著者は第75回全国社会科教育学会自由研究発表「古代史学習における社会的レリバンスの保障-パプリックアーケオロジーに基づく小学校歴史学習の構想—」において,小学生児童のアンケート結果,小学校教員,考古学研究者のインタビューの分析,及びパブリックアーケオロジ―の成果をもとに社会的レリバンスを保障する小学校古代史学習の在り方」について明らかにした。