本研究では「利害関係者が双方に納得できる解を創造できたとき,彼らの認識や判断は,より当該社会のあり様に適応した形で再構築される」という仮説をもとに,地図作成という納得解の創造を通して,学生がどのような認識,及び見方・考え方を,どのように身に付けたかについて分析した.
その結果,明らかとなったのは以下の点である.
第1は,納得解の創造を通して,既存の知識の再構築を行ったことである.地理的見方・考え方や地理的な感覚が乏しかった学生が,探究活動Ⅰにおいて正確な方角・距離に留意して岡山理科大学の地図を作成した結果,地図についての見方・考え方を更新することができた.第2は納得解を追究する中で生じる対立や矛盾を乗り越え,合意形成の方法(政治行使の方法)を身に付けたことである.①共通のゴールの設定②自他の意見の相対化と新たな意味づけ③それぞれの意見を反映した納得解形成という,合意形成のプロセスだけでなく,①平等な立場に立つこと②自分の発言に責任を持つこと③コミュニケーションという,対話が成立するための前提条件についても理解した.