|
|
本論文では,群馬県長野原町居家以岩陰遺跡から出土した炭化種実を報告し,居家以岩陰遺跡における縄文時代早期の植物利用の特徴について検討した.居家以岩陰遺跡の縄文時代早期の堆積層からは,クリ-コナラ属やクルミ属のナッツ類の炭化果皮片が多く出土することから,クリやドングリが主要な炭水化物源で,オニグルミは脂質源として重要だったと考えられる.加えて,作物祖先野生種であるヒエ属,アズキ亜属,ダイズ属の炭化種子も出土した.種子サイズは小さいものの,炭水化物やタンパク質,脂質源として重要だった可能性があり,将来作物へと進化する野生植物に縄文時代早期の段階から既に注目して利用していたことが明らかになった.このうち,アズキ亜属とダイズ属は縄文時代早期以降にも本州内陸部で利用が継続し,ドメスティケーションが継続したが,ヒエ属は縄文時代前期以降には,北海道と東北北部以外では利用されなくなった.縄文時代早期の居家以岩陰遺跡の炭化種実組成は,このような早期縄文人による有用植物の「オーディショニング」期間を示していると考えられ,ヒトによる植物のドメスティケーションの過程を考えるうえで重要な知見を提供するものである. |