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心理学において始まった越境についての議論は、越境学習に代表されるように 経営学にも及んでいる。従来の議論は、「越」、すなわち、なぜ、あるいはどのよ うにして越えるのかという論点に集中し、「境」、すなわち、越える対象としての 境界にはあまり注目してこなかったことが否めない。心理学においては、境界の あり方が変わり再構成される過程として、越境をみる境界変容が既に議論されて いる。 行政単位に基づく境界が与件として存在するまちづくりについては、主体と空 間を中心に議論されてきた。よそ者や、近年では関係人口が注目を集めるように なり、また行政単位と異なる境界を戦略的に設定するゾーンデザインが既に議論 されている今日、まちづくりの主体と空間について従来の与件に基づいて議論す ることは、窮屈になりつつあるのではないかと考える。逆の見方をすれば、その ような自縛を解いて境界を見直す動きに、まちづくりへの新たな示唆を見いだす ことができるのではないかと考えることもできる。 本研究は、8,000人程度の人口規模を維持することに努めると同時に関係人口 の活用を視野に入れたまちづくりを進める地方自治体の事例に注目し、地域外に 存在するまちづくりの担い手との相互作用に伴って、境界変容としての越境が彼 らの間にどのようにみられるかについて明らかにする。具体的には、行政と地域 外の民間を画する境界の変容に加えて、まちづくりの担い手となる地域外の民間 に内在する境界の変容についても明らかにする。 |