血中の乳酸脱水素酵素(LD)測定には,我が国では日本臨床化学会常用基準法(JSCC法),諸外国では国際臨床化学連合基準測定法(IFCC法)に準拠した測定試薬が用いられてきた。ヒト医療では国際標準化のため,2020年4月以降順次JSCC法からIFCC法へと切り替えられた。これに先立ち,移行時の混乱を避けるため両測定法でのヒト血中LD測定値の関係性が示された。今後,従来のJSCC法試薬が継続販売されるかは不明であり,獣医療のLD測定もいずれはIFCC法へと移行せざるを得ないと考えられる。ところが,各種動物のLDについて,測定値の関係性は不明である。本研究では両測定法で得られる値の関係性を把握するため,ホルスタイン種搾乳牛の血清LD活性をJSCC法およびIFCC法で測定し統計学的解析を行った。この解析にはJSCC法によるLD測定値が牛血清LD参考範囲(692-1,445 U/L)に収まった113検体のデータを用いた。対象とした113検体はJSCC法に比べIFCC法測定値で高値を示し,最大で1.10倍高値となった。x軸をJSCC法,y軸をIFCC法測定値とし回帰分析を行った結果,回帰式は,y=1.105 x-80.512(相関係数0.9985)となった。以上の結果より,ホルスタイン種搾乳牛の血中LD測定法をIFCC法に変更する場合,基準範囲や臨床診断値をIFCC法に対応させる必要があると考えられる。